内貴 じゃあ僕から。プロダクトデザイン専攻の修士2回生の内貴脩太といいます。
山田 陶磁器専攻4回生の山田佳代子です。
中辻 日本画専攻修士2年の中辻真尋です。よろしくお願いします。
内貴さんの制作について
内貴 僕は修士に入ってからは学部の頃とはまた変わった制作をしていて、去年だったらロボットに変形するソファなんかを作っていました。制作物にあまり一貫性はないんですけど、学部のときは授業で家具を作ったりもしていました。今座っていただいてるのも、4回生のときの椅子の授業で作ったものです。この椅子は僕が最初に作った合板の椅子で、その後時間に余裕があったんで、同じ雰囲気のベンチと、小さいチェストを作って、そのうちの椅子とベンチを今日持ってきました。
内貴 これ、合板とボルトでできてて、ビスや接着剤で留めてないので、分解できるものなんですけど。パーツ同士を繋げるボルトと金属パイプの形がかわいいなと思ったので、これを前面に見せるような構造になってます。
山田 最初、装飾だと思って見てたんですけど違うんですね。
内貴 そう、ちゃんと機能があって。ボルトとナットって、面と面を止めるためのものなんですけど、それを垂直に止めるには間にパーツがあった方がよくて。それがないとボルトが木にめり込んじゃうので締め付ける力が弱いんですけど、鉄パイプを挟んでるんで、大きな面でギュッと締め付けられる。今座ってもらってる座面とか、僕が座ってるこの座面も全部ボルトの力だけで固定されていて、ボルトを緩めると全部かぽっと取れるようになってます。そういう構造や作り方も一緒に考えて作っています。
山田さんの制作について
山田 今やってるのは、パンの材料と土を混ぜ合わせて、発酵させて、土ごと膨らませるっていう制作です。温度や釉薬を変えてバリエーションを増やしています。また本制作とは別に、芸祭で販売する陶器のボタンとか、パーツ系も結構好きで作ってます。
内貴 土の層の中にパンが入ってる?それとも混ぜてるんですか?
山田 こねる段階で混ぜて、焼いてます。
内貴 へえ~。混ぜるだけでパンの膨らみを残しつつ、土として成形できるんですね。
山田 そうですね。でも成形段階ではやっぱり粘り気があるので、パン寄りの作り方になるんですけど。焼いたら有機物は燃え切るので、土と膨らみだけが残る。
内貴 ああ~、確かにちょっとパンっぽい。メロンパンの割れ方というか。
中辻 おいしそう。
山田 これをもっと温度を上げて焼いたら、結構真っ白になります。
内貴 パンって言われたらパンっぽいというか。混ぜる比率でまた焼き上がりも変わるんですかね?
山田 そうですね。比率次第で膨らみや穴の数が変わってきます。
中辻 パンが好きなんですか?
山田 あ、そうです!パン屋でバイトしてて。辞めてから制作を始めたんですけど、どっちも窯で焼くっていう共通点に気付いて。一方で土は焼いたら縮むけど、パンは逆に膨らむなとも思って。それで混ぜたらどうなるんかなみたいな。
内貴 バイトがちゃんと活きてるんですね。珍しい。いいっすね、両方「食」の場にまつわるというか、器とかも食事で使われるし、パンは食べ物やし。ルーツが垣間見える。
山田 自分の生活と制作が繋がった感じはあります。
内貴 ちなみに一番好きなパンは何なんですか。
山田 シナモンロールです。
内貴 え~、そうなんや。ふっくらしたパン工場っぽいやつかなと思ったら意外と菓子パンやった。
山田 でも、本当に何でも好きで、結構パン屋さん行ったら5個ぐらい買って、食べます。
内貴 僕はベーコンエピが好きっす。
中辻 私は……フレンチトーストが好きで。
山田 いいですね。今日は一応制作のメモ的なものも持ってきました。これはレシピというか、どんな配合で焼いたかなんかを書いたものです。これまでにクロワッサンや食パンっぽいものも作ったんですけど、あんまりうまくいかなかった。でもこんな感じで、レシピ本みたいにして記録に残してます。
中辻さんの制作について
中辻 私は馬が好きで。おじいちゃんが競馬が好きだったので、家に行ったら競馬ビートがやってたっていう状況で。日ごろから馬を見ていて、競馬場に連れて行ってもらったりとか、乗馬体験とかをさせてもらったりする中で、馬をどうしても飼いたいっていうふうに思って。でも住んでるところが結構住宅街なんで、飼えない。飼えないんだったら、もし自分が馬を飼ったとしたら、こういう飾りをつけたいとか、こういう色の馬を飼いたいとか、そういうのを描いてる感じ。この間の8月に、内モンゴルに行って、そこで沢山馬を見てきて、いろいろスケッチとかしたんですけど。
山田 モンゴルの動物ってすごいたくましそう。
中辻 そうなんですよ。馬も首太くて足も短くて、どっしりしてる。
内貴 競馬の馬とは違うんですか。
中辻 そうですね。競馬の馬はなんか、背が高くて細くて……足も細いんで。
内貴 あ、細いんですね。アスリート的なたくましさがあるのかと思ったらそういうわけではない?
中辻 ムキムキではあるんですけど、細身のムキムキな感じ……。内モンゴルの馬は顔が優しくて、性格も優しいし、飾りもめっちゃかわいい。いろいろ動物に触れてきて、馬の持ってる雰囲気とか、どこの馬かっていうのも、模様とかに表現できるかなと思って描いてます。これとかもモンゴルの伝統模様なんです。
内貴 へえ~。あんまり見かけない柄というか。幅広く生活の中で装飾として使われてるんですね。
中辻 そうですね。将来は絶対に馬を飼います。
内貴 どうやって飼うんですか?実際飼うってなったら。
中辻 まず土地を用意して、ていう感じかな。
内貴 馬主とかとはまた違う?
中辻 馬主もいいんですけど、やっぱり自分で世話したいっていうのがあって。
内貴 所有してるんじゃなくてっていうね。別に競馬用の馬である必要もないんですよね?
中辻 はい、そうですね。
内貴 僕の家で飼ってるワンちゃんがイタリアングレイハウンドで、めっちゃ細くて足速いんですよ。だから細くてムキムキっていうのはちょっとわかるな~って。もう16歳とかでおばあちゃんなんですけど、元気なときは僕がちょっとでも走る素振り見せると走ってっちゃって、散歩大変です。
中辻 私も犬飼ってるんですけど、私の犬は雑種なんで、何とも言えない感じ。シェパードをちっちゃくして、親しみやすくした感じでかわいいです。でも走ろうとしたら、犬も走り出して速すぎてついていけない時がありますね。
山田 うちは猫飼ってるんですけど、猫も走るのめっちゃ速いです。散歩とかはないんですけど、家じゅうを駆け巡る。夜中になると唸りながら……。
内貴 馬なんかもう、散歩するってなったら大変ですよね。
中辻 ちゃんとしないとこっちが散歩されてるみたいな感じになると思います。馬乗ったときも全然……いうこと聞いてくれなくて、草食べ始めたりとか。こいつ慣れてないな、草食べたろって感じで食べられて、「食べさせたらあかん」って言われたんで、頑張って手綱でどうにかしようとしたんですけど、もう首の力が強すぎて無理、みたいな。
内貴 乗馬コーナーみたいなものではなく?モンゴルで乗ると、日本の馬と乗り心地は違うんですか?
中辻 競馬場の隣に馬が繋がれてて、1周いくらみたいな感じで乗せてもらえるところに、何回か行ったんですけど。いきなり行っておいでって引き馬でもなく放たれて。頑張って1周したんですけど、急に走り出しちゃって、「止め方を教えてもらってない!」ってなって。私は言葉がわからなくて、一緒にいた人がモンゴル語がわかる人だったので、「引っ張ったら止まるから引っ張って」って言われたんですけど、引っ張り方もわからなくって。とりあえず引っ張ったらその時は止まってくれたので、落ちずにすんだんですけど、あぶなかったですね…怖かったですけど、意外といけるんやっていうのが自信にもなって。また今度行ったときは走れるようになりたいなって思います。「走られた」んじゃなくて、走れるようになりたい。
内貴 僕流鏑馬見たことあるんですよ、正月のイベントで。あんなの、手離してるわけですよね。手でしがみついてても多分乗るの大変やのに、よくその中で弓を引いて当てるなっていう。
山田 衣装はかっこいいですけど、重そうですしね。
新校舎について
内貴 沓掛と違ってやっぱり新校舎、エリア分けがしっかりしてるから。前の校舎は曖昧というか、最初は多分決まってたんでしょうけど、結構関係なしに入ってたから、遊びに行きやすかったんですけど。今はちょっとあんまり繋がりを感じられないかも。グラデーションがないっていうか。
山田 対面授業でC地区とか行くんですけど。あそこ、どこも似た感じなんで、教室が分からなくなりがち。
内貴 確かに。日本画ってどこなんですか?
中辻 日本画D棟ですね。
内貴 それすら分かってない(笑)。
中辻 陶磁器は?
山田 陶磁器はグラウンドの真下です。
内貴 デザインはB地区です。陶磁器とデザインは繋がってるし僕も陶磁器に友人がいるんで遊びに行くんですけど、やっぱここちょっと向こうの校舎と道路挟んで違うんで、あんまり陶磁器のことわかってない。四回生って学科の対面授業ありました?
山田 旧校舎ではなかったですね。
内貴 ですよね。入ったら多分ずっとオンラインでしたよね。院生は旧校舎で授業を受けてたときは、教室でいろんな人と会ったりしたけど、今は授業もオンラインやし。授業中に抜け出して食堂行ったり、黒いソファーで集まったりしてたんですけど、あれも5年前の話ですよね。今やったら集まる場所ってどこになるんですかね。
山田 前ちょっと集まったのはC地区のひな壇みたいになってるところですね。大きい教室がちらほらあるんで、空いてたら集まれますね。
内貴 へえ~。食堂とかもないから、あまり会う場所がないというか。僕はサッカーたまにするためにグラウンドにくるんですけど。それも週一とか週二なんで。あとデザインの教室はいろんな専攻の子が遊びに来てくれるので、ソファー並べてるんですよ。深いでっかいソファをいっぱい置いて、たまに友達と集まってお菓子食べながら喋る。そこは居心地いいですね。
山田 陶磁器は大部屋で制作してるんで、集まってるっちゃ集まってるけど、くつろげるスペースはないかも。
内貴 芸祭でそれこそ陶磁器の院生の子と一緒にお店やってたんで、何かと用事があって行くことあったんですけど、周り割れ物だらけで、あんまり休まらないというか(笑)。陶磁器の子とかは土触り慣れてるんで、全然これぐらいやったら触ってくれても割れへんしって触るんですけど、僕は分からんし。机にも触れないように体細くして、そそくさと出て行っちゃう。
山田 確かに通路は結構細いので、他の専攻の人たちは通るのちょっと怖いかも。
中辻 冬のモコモコの服とかちょっとやばそうですよね。引っかかりそう。
内貴 あと高校生も見かける?
山田 そうですね。一つ下の階は高校の体育館とつながってて、「ここから先は高校です」みたいな張り紙がある。
内貴 体育終わりの高校生が通るんですよ、校舎内。この前見てびっくりした。こんな感じなんやと思って。
山田 ガラス張りなんでめっちゃ高校生にも見られます。
内貴 僕もたまに息抜きにスケボーで散歩してるんですけど、覗きますよ。陶磁器のとこ。この前陶磁器の裏の奥まで探検がてら行ってみたら、陶磁器の人がいっぱい集まってて。何やってるのか聞いたら、立ち幅跳びしてて。
山田 暗い中ですよね。
内貴 そう、びっくりした、声出たもん。誰もおらへんと思って探検してたら10人ぐらい居て。幸い友人がいたんで、気まずくならずにすんだんですけど。みんなで立ち幅跳びやってるって言われて。内貴も跳んでみてやって言われてとりあえず跳んでみたら、急にどよめき出して。「うわー、一発目でそれすげえ」って。いやわからんなあ、って。
中辻 前の流れを知らんから。
山田 突然の登場と喝采っていう。
内貴 めちゃめちゃびっくりした。真っ暗やったし。
山田 そう、気づいたら真っ暗になってて。
中辻 熱中しすぎて(笑)。
内貴 でもいいですよね、あのスペース。
山田 そうですね、あのスペースは結構のんびりできる場所ですね。
山田 焼きマシュマロぐらいならできそうな感じ。コンロぐらいやったら置いてもよさそう。
山田 他の専攻にはのんびりスペースありますか?
中辻 一応べランダはあるんですけど、目の前がマンションで。あんまりそこで騒げないなと。結構住人の方と目が合いそうになります。
内貴 あ、そんな距離なんですか?
中辻 それで模写室のブラインドをおろすことになりました。見晴らしは良いんですが、ベランダは出たとしてもちょっと外の空気を吸ったり、急に咳したくなったら出て咳したりくらい。
内貴 咳、中でしちゃだめなんですか?(笑)
中辻 模写室静かすぎて。申し訳なくてできないんです。お腹なるのとかも気になる、みんなめっちゃ集中しています。お昼休みは中でお昼ご飯食べるんですけど、私がよく行くのは、日本伝統音楽の専攻の人が知り合いにいるんで、そこの部屋に私の友達や院生の人、常磐津部の人なんかが集まってます。前の所長室から持ってきた茶色いふわふわのソファーがあるんです。
内貴 所長室?
中辻 伝音の所長室があったんですけど、所長がこのソファいらないから、次の院生室持ってっていいよって言われたらしくて。そのソファでくつろぎながら昼ご飯食べてます。
内貴 避難場所はあるんですね。デザインもカーテン開けてすぐ目の前にJRが見える。新幹線の他に急行や普通も走ってるんで、全然乗ってる人も見えます。気まずい。
中辻 駅近いから速度落としますもんね。
内貴 目合うんですよ。でも、電車がめちゃめちゃ好きなわけじゃないんですけど、この距離で新幹線を見れるのはちょっとテンション上がるなみたいな。この前黄色いドクターイエロー走ってるの見て。ラッキーでしたね。まあでも新校舎は分からんことの方が多いかな。そんで多分わからんまま卒業する。いうてあと6ヶ月ぐらい、あんまりわからんかったなと言いながら過ごしちゃうかも。
中辻 結構よさげなテラスあるんですけど、座れる感じの椅子がない……。
内貴 椅子、勝手に持ってきちゃ駄目なんですか?そういう感じじゃない?
中辻 何かよさげな、持って運べる椅子持ってきてくつろぐみたいなことやってる人もいたな~とは思うんですけど。
内貴 デザイン科のゼミではたまーに屋上で丸テーブル用意して、新幹線見ながらUNOして、いろいろやってます。UNOが白熱してゼミが全然進まないんですけどね。もう少し雑に扱っていい場所を見つけていきたいですよね。
山田 そうですね。今はきれいすぎて。
内貴 やっぱ最初に汚し始めたら、みんななあなあになるけど、まだ汚くないから。そういう意味ではちょっと誰か1回汚してほしいというか、カチッとしないようにして欲しい。
山田 このグラウンドもベンチないですしね。
内貴 ああそう、ない。ここ高校とかも共有なんで、ていうか市民と共有?この前ゲートボールしてて。
中辻 ベンチあったほうがいいように思いますけどね、ゲートボールやらはるんやったら。
内貴 最後に何かできひんかな。
山田 陶磁器は作品展のときに制作室の壁を好きに塗っていいよって言われてて。誰が何色にしたいかはわかんないんですけど、制作室内は汚し始めてますね。
中辻 いい傾向ですね。
山田 あとはご飯食べたいですね。
内貴 ピクニックっぽいことしてみたい。全体的に綺麗になって気に入ってはいるけど、もうちょっと緩くなったら、もっと居心地いいかな。案外自分の制作室から出ないから、探検していきたいですね。
- インタビュアー若野 桜子
- カメラマン大城 咲和
- 対談場所I棟 グラウンド