まずは自己紹介からお願いします。
好本 ビジュアル・デザイン専攻4回生の好本陽香です。
滝直 染織専攻4回生の滝直です。
三苫 構想設計専攻4回生の三苫ケイトです。
よろしくお願いします。今日はご自身の制作に関するものを持ってきていただいていると思うので、最初に自己紹介も兼ねてそれを見ながら話していきましょう。今回の対談は「場所」をテーマにしているので、大学の場所性についても後ほどお話ししていけたら、と思っています。
好本さんの制作について
好本 2回生の時はアクリルガッシュを使ってポスターを作ったりグラフィックデザインやロゴデザインなどをすることが多かったのですが、3回生から4回生にかけてはパソコンを使って作業する機会が多くなりました。ただ、手を動かすプロセスは無くしたくないと思っているので、しっかりと鉛筆を持って思考することも心掛けています。なので今日は思考ノートを沢山持ってきました。デザインって自分の表現したいものを表現する時もあるし、助けを必要としている事や人に対してどういう方法で解決していくのか、ということについても考えるのでそれらをまとめる為のノートです。
滝 すごく整理されてる。
三苫 このノートは何で分けているんですか?
好本 年代順です。
三苫 1年で一冊?
好本 これは2回生から3回生までの分で、こっちは今の分です。何かをデザインする時、それをデザインすることの意味を沢山考えながら制作をしています。例えば一枚のポスターを作るにしても、対象年齢によってポップだったりシックだったりと雰囲気を工夫してみたり、沢山あるポスターの中でこれを目立たせたい時にはどんなデザインでどんな色にすれば目立ってくれるかな、ということを調査、調査調査…これだ!みたいな感じでデザインしています。
滝 思考期間が長い?
好本 そうですね、ビジュアル・デザインの中でも私は特にしっかり考えてから作業に移るタイプです。逆に卒制は手を動かしながら表現方法を模索するような、「考える」ことから一旦離れた工作みたいなことに挑戦しています。今やっている制作の途中経過は本当に途中すぎて持ってこなかったのですが、スケッチはあります。何回でも気軽に描き直せるように最初はiPadでゴリゴリ描いています。これが卒業制作用のスケッチです。ドールハウスの形をした絵本を作る予定です。
滝 おぉ、上手。作品を作る時は白黒から考えるの?それとも作品が白黒になる予定?
好本 いつも白黒で考えて、後から色を足します。卒制は光と影に着目した作品を作りたかったので、色は考えずにあえてこのまま進めてます。
なるほど。色の話が出ましたが、皆さんが色を使うことについてどう考えているのかについて聞いてみたいです。
滝 僕はいつもフィーリング。例えば暖色は暖かいイメージや痛々しいイメージを持っている、みたいな感じでその色のイメージを意識しながら最終的な色の組み合わせは自分のセンスで選んでいます。白黒のみっていうのはそれでやり切る自信が無くて寧ろ怖いので色が好きというよりも、色にだいぶ頼っているという感じかな。
好本 私はカラフルな色は好きなのですが、色を使うことに対して少し苦手意識があるので滝さんにすごく憧れます。
三苫 私も色の組み合わせに関しては得意な方ではなくて…。滝さんは色の組み合わせを考える時、作品を作りながら決めていくんですか?
滝さんの制作について
滝 そうそう。自分にとっての好きな色の組み合わせがあるから、それをピックアップしながら作品のイメージやテーマに合う色を考えて制作しています。卒業制作では赤とピンクを中心に使って作品を作る予定です。これは今制作している途中のものなんですけど…。
三苫 どう編んだらこういった形ができるんですか?
滝 これは機械の模様編みで作っていて、これがその模様を出す為のパンチカードです。これを実際編んだ時にどういった模様で編まれるか、という試作もします。で、これ(大きい毛糸玉)が本番に使うものです。今回の卒制ではこれを更に編んで作品を作ります。作品の具象的なモチーフを足にしていて、過去のトラウマの再解釈というテーマで制作を進めています。足にトラウマがあるので足にまとわりついている感じを表現しようと考えています。
三苫さんの制作について
三苫 作品の説明をする前にまずお見せしたいものがあって…。制作と並行して1回生の最初にもらった総基礎ノートをずっと続けています。
滝 それが総基礎ノート?激変してる!
三苫 そう、色々と切り貼りして今は後ろの方のページまで来ています。私はイメージと言葉の関係に興味があって、普段の制作ではそれを主にインスタレーションとして作品にしていますドローイングやコラージュなどのイメージと、本や会話などから引用してきた言葉を配置して、それがどう作用するのか、どういう風に見え方が変わるのか、ということを試しているノートになります。残っているページはあとこれだけ。丁度4年間で終わりそうな感じです。
好本 大学生活が詰まっている…!
三苫 そうですね(笑)滝さんとは違って色を自分で決めていくことが得意ではないので、私は色の付いた折り紙を切り貼りして考えることが多いです。これは次のプラン用のイメージ図です。以前個展をした際にペーパードールが風で動くような作品を制作したのですが、それがシャッフルされているような印象があり、そのシャッフルという言葉の意味を調べた時に「足を引き摺る」という意外な言葉が出てきたので、卒制ではそのことを起点に制作しようと考えています。
滝 結構言葉から入る感じ?
三苫 そうですね。言葉から作品を作ることが多いです。あとはこれも。座学のメモから作品を作るということもあります。
これが座学のノートということが本当に信じられないです…。
滝 そう!そう!!
滝 なんて丁寧なんだろうって。僕はいつもそこらへんにある紙の裏にノートを取っているので。
三苫 私も紙の裏に書いています。で、それをノートに貼る。あとはそこから考えた事を文章に起こしてみたり、といったことを行ったり来たりしながら作品を作っています。
なるほど。この総基礎ノートも座学のノートも表紙がすごく綺麗にコラージュされていて本当に素敵です。
滝 色んなものを集めているのに統一感があるよね。
先程色を自分で決められないと話されていましたが、こういった表紙は雑誌などの切り抜きから色を決めているのですか?
三苫 そうですね。自分で色を作っているというよりは元々ある素材を組み合わせています。
滝 じゃあこの表紙って貼ってるの?
三苫 そうですそうです。
好本 え!こういうノートやと思ってた!
三苫 普通の大学ノートにベタベタとボンドで貼ってます(笑)
滝 うわー、すご!
三苫 これもお菓子の袋とか、切手とか、その辺にあるものを組み合わせていますね。
新校舎の話題へ
三苫 構想設計の制作室は一つの大きい部屋を複数人で使っていて、仕切りがないから上手く使うのが難しいな、という印象があるのですがみなさんの専攻はどんな感じですか?
滝 染織は前の校舎よりも部屋数は減ったけど部屋の面積は大きくなったから、大きい部屋でわいわい楽しく、みたいな感じかな。前よりもみんなと会う頻度が増えた気もします。
三苫 あ〜、確かにそうですね。今まで全然関わりのなかったゼミの人とも同じ部屋になったのでそれがすごく新鮮です。
滝 先輩後輩とかもね。
三苫 うんうん、確かに。
滝 前の校舎では学年ごとに部屋が別れていたけど、こっちのキャンパスに移ってからは構想室っていう一つの部屋に全員がまとまったんですよ。だから院生とも後輩とも会えるから交流も増えたし、この前はみんなでクリスマス会をやったりもしました。
えぇ〜楽しそう!
いいですね〜。デザイン科はどうですか?
好本 前の校舎の時のデザイン科は、ビジュアル・デザイン専攻、プロダクト・デザイン専攻、環境デザイン専攻の教室が別れていて、且つ2回生から院生まで全部部屋が別れていたのですが、移転してからは全専攻全学年が同じフロアに入ってます。
三苫 すごい。
滝 それもすごいよね。
好本 人が多くなったな、って。思いますね。一学年30人で、100人ちょっとが一つのフロアに入ってる状態です。
滝 染織の一つの部屋に人が増えたのとは全然規模が違う…。
好本 人は多くなりましたが、これはこれで少し安心感があるんですよね。コロナ禍でだったこともあって、家で作業する人が多くて、学校に来ても人があまり居ないことがちょっと寂しいなーという瞬間が多かったのですが、今は自分の専攻の人たち以外にも他のデザイン科の人たちで教室が賑わってて楽しいです。
それすごく分かります(笑)皆さん移転してから学校の中は回られましたか?
三苫 展示場所を決めるために色々回りました。専攻によって場所の雰囲気が全然違うな、という印象があります。油画の院生部屋がある階はすごく天井が高くて、教会っぽい雰囲気がある。
油画専攻の部屋、すごく天井高いですよね。他にはどうですか?
滝 漆工専攻の教室がとにかく豪華です。あとは扉が全部ガラスだから、他の専攻は何やってるんだろうっていうのが覗けるのがすごく面白い。特にデザイン科のところは全面ガラスだから、おぉ、あんなことやってるんだ、って思いながら見ています。工芸基礎やデザイン基礎も上の階の外通路から全部見えるから、今日はみんなめっちゃ作業してるなーとか思いながら覗き見してるって感じです。
なるほど。このC棟は大きな吹き抜けがあってすごく眺めが良いですよね。
三苫 そうですね。下が丁度図書館で、全部見えるというところも面白いです。
前の校舎ではこういった動線はあまりなかったですもんね。空間的にも、人の動き的にも全体的に見やすくなったという印象があります。ちなみにですが、皆さんにとって居心地の良い場所は見つかりましたか?
三苫 制作室を出たところにちょっとしたスペースがあって、先日そこにソファーが新しく来たんです。そこがみんなの場所になりそうな感じがしています。
好本 良いですねぇ〜。
そういう場所ってこれからどんどん増えていくんでしょうね。染織専攻はどうですか?
滝 さっき話した構想室の中に共有スペースみたいな場所が2箇所あって、その内の一つはみんなでお昼を食べたり話したりする場所なのでそこがよく集まる場所になっています。あとは広いテラスがあって、外に出たら京都タワーが見えて景色がわーって広がっていてすごく気持ちが良い。そこは1人でゆっくりしたい時によく行きます。
好本 良いなぁ〜。
デザイン科はあまりそういう場所ないね。
好本 ないな〜。あ、でも、みんなが制作している大きい部屋の奥に小さな部屋が3つあって、そこに入ってくる夕日がすごく綺麗です。あそこくらいかなぁ。
滝 立地もすごく良くなったよね。前のキャンパスよりもずっと来やすいから、例えば今芸大通りに面した部屋でやっている留学生展も知らない人がちょっと入ってきて観てくれる、みたいな。こういうことは前の校舎の小ギャラリーだと絶対になかったことだと思うから、すごく良いところだと思います。
三苫 あと作品展にも来てもらいやすいですよね。
滝 芸祭もね。
今年は来場者数がすごく多かったらしいですね。
滝 うん、全然違った。今年は海外の観光客の方とか、近所の人とか色んな人が来てくれたので、今までとは違った多様性のある場ができていてとても嬉しいです。
そういう場としてこれからどんどん広がっていったらいいな、という感じですね。そろそろ終わりの時間なのですが、他に言っておきたいことはありますか?
好本 はい!食堂が欲しいです!食堂と購買が欲しいです。
滝 ほんとそう!
三苫 ほんとに。
それは強く訴えていきましょう。大学生活をより良くしていくために!ではそろそろ終わりましょうか。少し長丁場になりましたが、色々お話できて楽しかったです。本日はありがとうございました。
- インタビュアー大谷 花
- カメラマン畑 えりか
- 対談場所C棟 講義室12・畳スペース