ANNUAL EXHIBITION 2023 KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS

構想設計専攻４回生の三苫ケイトです。

ポートフォリオを見せながらでも良いですか？

去年の秋に京都駅ビルで展示をしたのですが、これが結構自分の転換点というか、やりたいことの軸が決まった展示でした。この時はマンカラというボードゲームを使った展示で、 人が話した言葉が自分の言葉になったり、自分が言った言葉が相手の言葉として話されたり、という言葉の 循環みたいなものを、このボードゲームのルールに重ねるようなことをしていました。
このゲームは、ボードの手前側が自分の陣地、反対側が相手の陣地になっていて、ボードに空いている穴に石を一つずつ落としながら配置していって、最終的に自分の陣地から先に石を無くした方が勝ちというルールで、最も古いボードゲームと言われています。
このゲームでは石が駒として使われるので、自分の駒/相手の駒という区別がなく、相手の駒だったものが自分の駒になったりと、一時的に預かるようなルールが面白いなと思って。
私は作品を作る時に座学の授業ノートからイメージを膨らませる、ということが多くて。この時は、会話分析という分野の授業がきっかけで、会話の構造について作品を制作し始めました。

このノートは1年生の時に配られた総基礎ノートで、今もちょっとずつ描き貯めているんですけど、人から聞いた言葉 とか、見たものとか、本からの引用とか、そういうものを寄せ集めて、自分でイメージに落とし込む、ということを続けています。相手のものを自分のものに置き換えて保存していく、というようなことに興味があります。

マンカラの作品の時から、言葉の所有に対しての興味が続いていたので、会話の中で自分が聞いた言葉を羅列した文章を展示しました。それと一緒に、2mほどの細長い机の上にコピー用紙の束、その上に実際の屋根を置いたものを制作しました。
ホームセンターでこの屋根を見つけた時、遠くにあって大きくて頑丈なものだと思っていたものが、手に取れる近さで小さくてペラペラなものになり変わったような感覚が気になって、この屋根を使って作品を作ろうと決めました。
自分と相手とか、近いと遠いとか、離れたものの間にある距離について考えながらの制作だったと思います。

見た目は模型とかに近いかなと思うんですけど、模型の寸法にしては中に入っているものが何もなかったり。少し違和感があるものを作りたいと思っています。

でも実際、これはすごく変なものであるはずなんですけど、案外作品があることに気づかなかったりする、というのが面白くて。展示場所には大きな窓があったんですけど、その窓を開けていた時、そこから吹く風の方に先に気づいて、後から作品に気づく、というようなことがたびたび起こりました。たしかに存在しているけどその場に馴染んでいる、みたいなものを作りたいなと思っています。

前回の展示の時に、風によってペーパードールが回転するような作品を作っていたんですけど、順番が入れ替わっていくシャッフルという現象についてもう少し考えたいなと思っています。”shuffle”という言葉について調べてみると、足を引きずるという意味があるということが分かって、 すごく軽やかなイメージだった”shuffle”という言葉が急に重々しいものに変わって不思議だなと思ったので、そこからイメージを広げていっているところです。
これまでは立体物を制作することが多かったのですが、今回はドローイングも試してみようと実験しています。

そうですね、「違和感」から考えはじめることが多いので、今回もそうなるかなと思っています。
思ってたのと違うこととか、うまくいっていないこと、矛盾しているようなことに遭遇した時の、何かずれるような感覚について考えることは、身体のことについて考えることにもなる気がして。
言葉にするのがなかなか難しいですが、卒業制作ではそのような感覚も含めて形にできればと思っています。

元々狭い部屋を3、4人で使っていたので、部屋が広くなってみんなで使うスペースになったというのが一番大きな変化ではあるんですけど、まだ自分の部屋として使えていないな、というのがあって…。もうちょっとうまく使えたら良いなと思っています。あとは立地的にいろんな場所に行きやすくなったのがすごく良かったな、と。近くでやっている展示や舞台など、色々見たいものを見に行ける環境ができたのが嬉しいです。

がんばります！（笑）