ANNUAL EXHIBITION 2023 KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS

2024.2.7wed -2.11sun 10:00-18:00

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学生インタビュー

鄭 卉芹 Cheng Hui Chin

保存修復

よろしくお願いいたします。最初に自己紹介をお願いします。

はい。私は、4年前、2020年の3月に日本に来て、後期10月に京芸の研究留学生に、2年前に大学院に合格して今は修士2回生です。
自分は文化財保存に興味を持っていて、台湾では絹に絵を描く人が少ないのですが、絹の保存とか、どうやって絵を描くのかを台湾のみんなに伝えていきたいと思っています。
なので、自分がこちらで先に勉強して、日本で修復士として就職する予定なんですけど、将来もし機会があれば台湾のみんなに、絹をどうすればいいかとか、絹に絵を描きたいんだったらどう描けばいいかとかを伝えたい。
技法や保存の方面も全部詳しく勉強したいので、研究テーマは絹を基底材とした仏画を選びました。時代としては、基底材や素材は今の人工絵具より昔の天然絵具の方が単純なのもあって、平安時代の作品を選びました。
そして、仏画で特徴的な表現技法である截金技法(きりがね)や文様、繧繝彩色(うんげんさいしき)​​などとかについても勉強したいので、選んだ作品は、国宝の絵画類なかで第一号である平安仏画普賢菩薩像です。この作品の想定復元模写をしています。作品の一番下の部分が大きく欠損していて、足の部分がもうほとんどなくなっています。なので、900年以上前にどんな様子で描かれたのかを再現したいと思っています。そして模写を通して、仏画に施された技法、截金などを身に付けたいと思っています。

想定復元模写っていうのは、欠損前にどうなっていたかを再現するっていうものですよね。

そうです。今回模写作品が大きく欠損していますので、想定の部分が多いんですね。ある部分の截金の文様とかもなくなっていて、剥落​​とか、背景が黒くなっている部分とか。

なるほど。鄭さんは4年前に日本に来られたと思うんですが、なぜ日本に来ようと?

当時、台湾にいた時には美術学科で日本画を専攻していたので、日本画をせっかく勉強するんだったら、日本に来た方がいいんじゃないかなと思いました。

京都は文化財を持つ神社や寺院が多くて、古都だと呼ばれることも台湾で有名です。お寺が多くて、仏画のような古い絵画や仏像、建物などが多いので、それが京都に来たかった理由の一つですね。京芸に来る前は、東京の昭和女子大学に交換留学しましたが、やっぱり東京と京都は全然雰囲気が違うと感じました。

保存修復をやるんだったら、京都の方が結構資料が多い?

そうですね。東京は首都であり、重要文化財の数が一位ですけど、京都は第二位であって、資料も多いと思います。また、最近文化庁も引っ越してきましたし、文化財や修理でしたら京都が多いんじゃないかなと思います。

確かに、そうですよね。
引越しといえば、京芸も新校舎に引っ越してきましたが、前の校舎と比べて使い心地などどうですか。

一つめっちゃありがたいのが、前の学校だと水を出すと茶色で、それは修理や制作に使うのが良くないとすごく思いました。ここに来て綺麗に使えるのがいいなと思いました。また前だと修復演習だと言う授業は、距離がある音高(旧京都市立音楽高等学校研究​​室)でありまして、保存修復の研究室は前の校舎の中央棟の4階にあって、エレベーターもないし、毎回忘れ物があったら取りに行くのが結構大変だったんですよ。あとは交通が便利になったのもありますし、周りもちょっと賑やかになっていて、綺麗でもあり、使いやすいですね。

ここを制作室として使っていると思うんですけど、何かお気に入りの場所とかってありますか。

やっぱり保存修復だとこの共有スペースが好きですね。今は教室がもう近くになって、修復演習授業の休憩時間もここにしています。みんなよくここで一緒にご飯したり、喋ったり、買ってきたお土産をみんなと一緒にシェアしています。

いいですね〜。お菓子とかお土産とかあって、楽しそう。

そうですね。ベランダでもワイワイしました。こっちの校舎、もう全部好きです。でも自分の思い出になるというと、やっぱり私の制作部屋になっちゃっている実験室です。

実験室へ

実験室では、実験したりとか、顕微鏡で写真撮ったりとかで使っています。私のスペースではないけれど、一旦使っています。これは想定復元した截金の線です。これから截金作業をするので、想定復元した截金文様を転写しています。結構量がやばいです。これ、全部截金です。結構大変な作業です。全部線です。

前に貼ってあるものが元の……?

はい。現状です。下の部分が欠損しています。

想定するときって、どういったプロセスで進めるんでしょうか。

この作品は本が出ているので、本借りて見たらいいんですけど、他の人が調査してる作品だと、例えば、調査のお願いするか修理報告書みたいなものをお願いしてもらうとかです。調査報告書を見ながら使われた素材を推敲します。例えば、Cu元素だと緑青、群青とかわかってきて、目視や顕微鏡で粒子を観察して色を見てから緑か青色か推敲できます。Pb(なまり)だと鉛白とかオレンジ色である鉛丹、Auだと金など、少しずつ推敲していきます。染料絵具や岩絵具など使われた素材を推定して、もう1回同素材同技法で再現する復元模写作業ですね。

時間が経つと変色というか、色もどんどん変わっていきますもんね。
ちなみに今はどういう工程段階なんでしょうか。

昨日は金箔の焼き合わせ作業をしました。金箔を4枚重ねて、アイロンで焼き合わせして、厚みを持たせます。厚みを持たせないと、金箔が薄く柔らかくて、竹刀で線に切ることができないです。
ここに金箔を焼き合わせて、また箔盤に切ってそこに貼ります。これ、前に作ったサンプルなんですけど、こんな感じで厚みと色みの実験をしてみました。これだと金箔の中に銀箔が挟まっています。こういう色みです。あまり差が見えないけど、これ(金箔の中に銀箔2枚が挟まってる)はちょっと変色してきてますね。でも、これ(金箔4枚)だと全然色が変わってないんです。この作品だとやっぱりこういう焼き合わせ箔も使われています。

すごい細かい作業なんですね……!
ありがとうございました。


  • インタビュアー若野 桜子
  • カメラマン大城 咲和