ANNUAL EXHIBITION 2023 KYOTO CITY UNIVERSITY OF ARTS

2024.2.7wed -2.11sun 10:00-18:00

instagram X


学生インタビュー

谷村 無生 Mu Tanimura

芸術学

まずは自己紹介からお願いします。

美術研究科の芸術学専攻修士2回生の谷村無生です。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。谷村さんは普段どういった研究をされていますか?

現代美術の中の、特に日本の現代美術を研究分野としています。最初は「おぞましさ」という感覚の研究をしていたのですが、修士論文に向けては鴻池朋子(こうのいけともこ)さんという作家の作家研究をしています。存命の方なんですけど、どのような作品を作っていてどういった方針で制作をしているのかということから、美術の文脈や似た作家とどう違うのか、ということについて浮かび上がらせていけたらと思っています。

その「おぞましさ」というテーマから繋げて鴻池さんに絞って研究を始めた、という感じですかね。

そうです。「おぞましさ」っていうのは形容詞なので、誰がおぞましいと感じたのかといった定義が結構難しいんですよね。論文の中で、こういったものをおぞましいとして研究していきますっていうように論を立てるためのスタートラインにも立ちづらいので、具体的な作家から入った方が研究しやすいかと思って。前から気にはなっていたけど、なかなか言語化できていなかった作家を思い返したときに、鴻池朋子さんは面白いかなと思い研究を始めました。

鴻池さんはどういった制作をされている方ですか?

鴻池さんは、1990年代末からアーティストとして制作活動を始めている日本人の作家です。よく使うテーマは動物で、狼がモチーフとして出てきやすい。素材としても動物の毛皮や牛革を使って制作することが目立っているのですが、かなり表現方法は多岐にわたっていて、普通の平面作品、いわゆる絵画作品もありますし、アニメーションも作っているし、毛皮を使った立体物ももちろん、ワークショップもしますし、なんなら展覧会の企画もするんですよ。

鴻池さんはご存命とのことなのですが、存命の方を研究していく上で何か難しいことはありますか?

まず一つは、先行研究がほとんどないので参考資料が少なすぎる、ということです。鴻池朋子研究をしている人がいないので、自分が研究の第一人者みたいな形にどうしてもなってしまう、ということが一番苦しいところです。展覧会の図録に書かれているテキストや美術手帖等からしか情報を持ってこれないというのも難しいですね。でも良い点ももちろんあって、存命の作家ということは作家に会いに行けるってことなんですよね。実際に生の資料を自分で作成することができるっていうのは大きいかなと思います。とはいえ、実際に話が聞けて資料が取れるというのは良いのですが、作家の代弁者になりかねないというか、作家本人が言っていることをただ反復しているだけの論文になりかねなくて、そこがすごく大きく自分に作用してくる感じはあります。やっぱり生の声なのでより影響を受けやすいというか。

作家さんの声にというか、制作スタイルに。

そうですね。どうしても作家本人の視点に寄った研究になってしまったり、結局作家本人を売り出すような論文になったりするのでそこは危険ですね。

研究する上で気をつけていることはありますか?

僕が言わなくてもいいような内容の論文になってしまうことがないようにする、ということに気をつけています。具体的にどうしているかというと、読者をその研究対象本人に想定しているんですよ。「こう書くか!」って鴻池さんに驚いてもらえるものにしたいっていうのはありますね。彼女の考えが及ばなかったことや内容に言及ができるようにしたいなと思います。

なるほど。話が変わるのですが、大学が移転したじゃないですか。使用感とか、気持ちの変化などについてお伺いしたいです。

個人的にですけど、通うのが圧倒的に楽になったので大学によく来るようになりましたね。あとは専攻特有かと思うのですが、沓掛校舎の時の芸術学の研究室は教務などが入っていた中央棟の建物の一番上にあったので、アトリエ棟ともちょっと物理的に距離があったんですよ。一度上まで上がれば下りてこないし篭りがちになってしまって、制作の人や他の専攻の人と会うことはあったけど今よりは少なかったです。今は一つの建物の中に、4階が構想設計で5階が芸術学と保存修復、上に行けば博士ラボがあって、もう一つ上には油画の修士がいますよね。結構いろんな専攻で、しかも学部から博士まで入っているのはいいですね。

人との距離が近くなったというか、人と会いやすくなったという。

ありますね。エレベーターに乗った時に、構想設計の友達に会ってそのまま構想の研究室に遊びに行って一緒にお茶して、なんならゼミもちょっといる、みたいな。芸術学にとって結構醍醐味。この大学自体制作と理論が同居してるのは、僕たちにとって良い環境だと思います。あとは、この棟は真ん中が空いている分、下の階が見えるようになっているんですよね。下の階に先生がいてちょっと目が合ったら教室から出る、みたいな。会話とまではいかなくても、お互いを認知し合うようなコミュニケーションが、ここC棟では交差しているなって思います。

良いことですね。最後に意気込み等はありますか?

頑張ります。鴻池さんは表現技法が多いのに、今までの研究では描かれているものくらいしか注目されてこなかったんです。彼女の要素には展示の空間演出だったり、アーティストになる前はデザインの会社に勤めていたこともあってデザイン的な視点も入っているので、一作品の考察よりも展覧会を単位に見ていった方が実は良いのではないかと思っています。展覧会単位で見ていくと作家像ってまた違ったように見えるよ、とそういう研究手法も今回の修士論文で言えたらいいなと思っています。

楽しみにしています。本日はありがとうございました。


  • インタビュアー大谷 花
  • カメラマン大城 咲和